オリヴィエ・モンジャン 1951年生まれ
1976年『エスプリ』誌の編集次長に就任。
1982年に編集長、次いで1988年には編集主幹に就任。
1985年からスイユ社「思想の色」叢書の共同監修。
1993年から1997年までアシェット社「社会の疑問」叢書の監修。

リヨン大学講師、セーヴル・センター講師を兼任。

出版:

La Peur du vide. Essai sur les passions democratiques I, Paris, Seuil, 1991.
Paul Ricoeur, Paris, Seuil, coll. Les contemporains, 1994, Points-Poche en 1998.
      ポール・リクールの哲学〜行動の存在論 、新曜社、2000
Face au scepticisme, Les mutations du paysage intellectuel, La Decouverte, 1994, en poche chez Hachette (coll. Pluriel) en 1998.
Vers la troisieme ville ? Preface de Christian de Portzamparc, Hachette, 1995 (epuise).
Buster Keaton, L'etoile filante, Hachette, 1996.
La violence des images. Essai sur les passions democratiques II, Seuil, 1997.
L'Apres-1989. Les nouveaux langages du politique, Hachette Litteratures 1998.
Eclats de rire. Variations sur le corps comique. Essai sur les passions democratiques III. Seuil, 2002.
Paul Ricoeur. De lユhomme coupable a l'homme capable (en collaboration avec Michael Foessel) ADPF, 2005
La condition urbaine. La ville e lユheure de la mondialisation, Seuil, 2005

 私はポール・リクールの著作に親しんだり、彼のところへ足繁く通うようになったわけですが、それにははっきりとした2つの理由があります。
 まず最初に、私が1970年代『エスプリ』誌の読者だったとき、定期的にこの雑誌に寄稿していた彼の哲学や政治に関する文章を読んでいたことが挙げられます。こうして私はクロード・レヴィ・ストロースとの対談や構造主義についての論争に対する彼の様々な文章だけでなく、大学の未来や、改革と革命との関係について彼が行った考察に魅了されていきました。思索家であると同時に行動の人でもあったリクールが仕事をした雑誌で、この私が1977年より常任のポストに就き、1988年から編集主幹を務めるようになったというのは決して偶然ではないでしょう。以上が、私のポール・リクールとの最初の出会いですが、それはまた彼が主要な役割を果たしていた文化機関との出会いでもありました。1988年以降(現在の『エスプリ』誌の編集チームが彼についての特集号を組んだ年)、ポール・リクールはフランスやヨーロッパの文化的領域で中心的な役割を演じるようになりましたが、1980年代において彼は様々な理由でアメリカに「追放」されていた、ということは詳述するに及ばないでしょう。ただし追放というのも少々大袈裟で、というのも大西洋を渡る旅をしながら彼は思索を巡らし、常に様々な哲学的伝統を「話題に上げる」ことを好んだからです。例えば、(メーヌ・ドゥ・ビランからジャン・ナベールに到るまでの)フランスの反省的思索、(フッサール、ガダマー、パトチュカなどの)現象学的解釈学的思索、アングロサクソンの分析哲学などがありました。
 他方、哲学を研究し、政治哲学(コルネリュウス・カストリアディス、クロード・ルフォール)に惹かれた私は、(メルロ=ポンティを参照しつつ)現象学と政治哲学の関係についての考察に取り組み始めましたが、この試みは全体主義批判と呼ばれるものに行き着きました。このような動機があって私は、ポール・リクールがパルマンティエ大通りで主催しフッサールの専門家達が集っていた現象学のゼミに足を運ぶようになりました。以上が、リクールとの二番目の繋がりであります。知的で哲学的なより直接の接触と言えましょう。逆説的ではありますが、『エスプリ』誌で出会う前にこのような経緯で彼と出会っていたのです。
 続いて、スイユ社が私にリクールの思索についての著作を執筆するように依頼してきました(『ポール・リクール』、パリ、スイユ社、「現代人」叢書、1995、スイユ社版文庫、1998;『ポール・リクールの哲学―行動の存在論』、新曜社、2000.)。そしてフランス外務省の文化部がつい最近リクールに関する二冊目の著作を依頼してきました(『ポール・リクール、罪を負った人から有能な人へ』、ミカエル・フセルとの共同叢書、2005、ADPF版)。
 私は日本のことを知りませんが、今までに何度も招待の声がかかりました。しかし次の機会に期待しましょう。というのも「国際的な雑誌」の編集主幹として日本の社会的・政治的進展に関心を抱いているというのもありますし、また日本の知識人や哲学者達の業績を存じているからでもあります。
オリヴィエ・モンジャン、パリ2005.09